趣味は人脈を広げる
自分の正直な気持ちを吐いても理解してもらえない事が多かった。
そんな理解してもらえない気持ちをどうしようかと思っていた。
友達に何度も相談したが、理解していないようだった。
そんなことを考えなくてすむように、なにか趣味を持ちなよ。
趣味を持てば、趣味を通して友だちができる。
友だちにそう言われた時に、「わかってるんだよな」と邪険に思っていた。
けれど、”共通の趣味"というのは、異性とうまくコミュニケーションの取れない僕からすれば、
点から垂れる、蜘蛛の糸のようなものだよな。とも思っていた。
実際に趣味がないことはないし、けどその趣味は自己完結してしまう。
そこから繋がりが見いだせない。
とりあえず趣味の合う人を見つけようと、誘われた飲み会やご飯会に顔を出した。
その結果、Amwayに誘われたり、宗教勧誘や、詐欺グループに潜入したりもした。
危ない橋を渡る事になってしまった。
そこから、趣味の友達を探すことを諦めていた。
気の合う昔からの友人とご飯を食べ、お酒を飲めればいいと思っていた。
その時から、本当に行きたいと思う、ご飯や遊びにだけ行ってた。
そんな矢先、同期の子から、「今、女の子と飲んでてて、年下の子が良いって言う子がいるからこない?」と連絡があった。
僕は、23時だぞ?と思いながら、いつもなら断っているはずの飲み会に終電に乗って向かった。
僕がついた頃には、3人は出来上がっていた。(同期の男1人、女の子2人)
年下が好きな女性の横が空いていたので、靴を脱ぎ、そこに座り。レモンチューハイを頼んだ。
どうやら、その女性は”年上の男性”と同棲をしていたが、
家電を全て持ち去られて蒸発してしまったらしい。残ったのは、彼女の私物と、合鍵だけ。
“年上に騙された悲劇のヒロイン”を演じている自分に酔っているな。と心のなかで思っていた。
それが昨日の出来事にも関わらず、あっけらかんとしていたからだ。
僕は作り話ですよね?と失礼なことを聞いてしまった。
彼女は作り話なら楽なんだけどね、と目を伏せてしまった。
やってしまった。和気藹々としていた空気を一瞬で破壊してしまった。
その瞬間、脳をフル回転させ、どうこの状況を打開しようか考えたが、
どの発言、どの行動をとってもうまく行かなかった。
すると彼女が突然笑い出した。
僕があっけにとられていると、「靴下穴あいてんじゃん。」と言われた。
僕は急いで準備をしたから、靴下に穴が空いていることに気がついていなかった。
(しかも左右で違う靴下を履いていた。)
その瞬間にピリついた空気が僕が来る前の空気に戻った。
心の底から靴下に感謝した。(かえってすぐに捨てたけど)
彼女がお酒を次々に注文し、とりつかれたようにこの世界に悪態をつき始めた。
「ご飯なんて、どうでもいい。」「イルミネーションなんてクソだ。」
「梅田駅前、吐き気がする。」
そのどれもに僕は共感し、自分もそう思っていることを話した。
自分の正直な気持ちを白い目で見られないことに腰を抜かすほど驚いた。
僕の正直な気持ちを理解できる人などいないと思っていたからだ。
しかもそれが異性となれば、10万人に1人だと本気で思った。
“共通の悪口"を持つ人は"共通の趣味"を持つ人並みのコミュニケーションツールになった。
“この世界に共通の悪口を持つ人"が存在しないと思っていた僕は、精神的童貞だったのだ。
そして「存在しない」というものから、「いるにはいる」というものになった。